Person - 2019-01-17 07:12:00

筆文字とシルクスクリーンのコラボレーション。

書画人 - 国崎 幸子 / シルクスクリーン職人 - 国崎 満

「しろ」との出会い。

幸子:大学を卒業後、東京のデザイン事務所に入社しました。一緒に何人か東京に就職した数人のうち、とりわけ優秀な友人がいました。私が卒業制作で筆文字を書いていたのを覚えていたらしく「ちょっとアルバイトで文字を書いてくれない?」と頼まれて書いたのが、高橋酒造さんの「しろ」でした。当時は、こんなに有名になるなんて思わなかったので、何にも考えずに書いた作品です。紛れもない私の「TORIGGER」な存在。
当時は九州でのみ販売されていた「しろ」ですが、現在では日本全国と海外でも販売され、そ人気は今もなお衰え知らず。書家としての私を宣伝していただいているようなもので、大変有難いことだと感じています。

入社したデザイン事務所で、たまたまイラストを描いたら「君はイラストレータの方がいいんじゃない?」と言われ、半年でその事務所を辞めて、訳のわからないまま個人事業主になり、印刷会社からイラストの仕事をいただくようになりました。
当時は、本当に何もわからなかったので、領収書と請求書の書き方もわからず、「持って行って書けばいいや」と思っていたら、複写式というのを知らずに、強く書きすぎて領収書1冊の半分くらいまで裏写りしてしまったり(笑)。今、振り返れば笑ってしまうことも多々ありますが、東京に行って緊張しながら仕事をして、人やクライアントさんとつながったお陰でフリーになって・・・「頑張ってきたな」と感慨深い想いですね。

 

 

シルクスクリーンの世界。

満:同級生だった僕は大学を中退して、福岡のシルクスクリーンの会社でアルバイトをしていました。当時、版を焼く担当で「自分で版を塗って焼いて印刷していいよ」と言われて、アクリルに印刷しました。手で触ると、文字の凸部分がわかるんです。感動して、すっかりシルクスクリーンにハマってしまいました。

彼女が卒業して上京する数日前、お義母さんに紹介されたんですけど「一緒に東京に行かんね?」と言われて、ひとりで東京に行かせるのが心配だったんでしょうね。彼女の上京3日前に僕もアルバイトを辞めて一緒に上京しました(笑)。

東京で修行をしたいという想いもあり、シルクスクリーンの会社で働きました。東京は情報量が福岡とは比べ物にならないに多くて・・・。例えば、福岡は代理店を通してインクを発注するんですが、東京ではインクメーカーが直接売りに来るんです。だから、インクの情報も直接聞けるという利点がありました。

シルクスクーン印刷は、インクジェットが主流になってしまった今では、職人さんもいなくなってしまい衰退してきた業界なんです。自分が最後のスクリーン職人になりたいと思っています。無くなることはないと思いますが、唯一無二というか、他ではできないような仕事も、僕たちだから自信を持ってできる、その道30年以上のベテランの職人ばかりです。

シルク印刷をご存じない方も多いと思います。例えば、リモコンの表面の印刷、デパートや公共施設のインフォメーションサイン、ランドセルの裏地の模様など、意外とみなさんの生活の周りに多く使われています。ノベルティや記念品、デパートのブランドのロゴマークなどもそうです。壁に直接印刷するので、失敗したら壁ごと替えないといけないので緊張もしますが、実際には失敗も何度かあって、壁を塗り替えてもらったこともあるんですよ。(笑)

 

 

 

私の中の筆文字。

幸子:福岡に帰って今の会社を始めた当初、顧問が建築関係の仕事をしていて、その業界の方が集まるイベントで、木の素材の表札に直接お名前を書かせていただく機会がありました。今思えば、あれが筆文字の仕事が増えるきっかけだったように思います。表札の文字が通常のフォントではなく、ひとつひとつ手書きなので、「オリジナリティがある!」と人気が出て、命名書やお祝いの額などを書くようになりました。それまでは、企業様からロゴデザインを頼まれるというお仕事が多かったのですが、個人のお客様からの依頼を頂くようにもなりました。

個人的に好きな書家は「柿沼康二さん」です。風林火山などの作品を書いている方です。私よりも10歳もお若いのですが、隅々まで本当に素晴らしいんです。こんな字が書けるようになりたいと思っています。

東京にいるときに指導していただいていた先生に「いくら修行しても、いくら練習して書いても、品がある字を書くというのはなかなか難しい。あなたの字には品がある」とおっしゃっていただきました。先生のその言葉が今の私の支えです。納得のいく字はなかなか書けませんが、どれだけ崩しても品がある字を意識し、本物の「字」を書いていきたいと思います。

 

 

 

ふたりのコラボ「JET BLACK」。

幸子:東京の小さなアパートで、頼まれたTシャツの印刷を2人で部屋の中に干したり、大晦日の夜、ラジオで紅白を聞きながら8時間かけて年賀状を200枚刷ったりしていました。シルクスクリーンで十二単を印刷したかったので、1枚に15色くらいをのせて1回1回刷って、取っては乾かして・・・大変でしたけど、ふたりで考えて作っていくということを、当時からよくやっていました。

昨年、ふたりのコラボレーションとして立ち上げたのが、私が書く筆文字を牛革にシルクスクリーンで印刷してバッグや小物に仕上げたアイテムです。

満:最初は「筆文字をそのまま印刷するのも面白いんじゃないの?」という思いつきから始まりました。皮に直接書いたように見えるでしょ?そういう技術は他にはないんです。ゴシゴシしても剥がれることがなく、この技術ほど強いものはないと思っています。印刷は透明なんですけど、皮の色や厚み、デザインによってもディティールが違って見えるのが特徴であり、魅力だと思っています。

オリジナリティが出せるものなので、うまく使って頂くと様々な商品に変化します。「いつまでも乾かない濡れたような光沢」の、特殊な印刷技術を施した「JET BLACK」。まだまだ改良の余地がありますので、様々なアイディアをいただきながら進化させていきたいと考えています。